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窓ガラスに亀裂が入るのを見るのはそれがはじめてではありませんでした。しかし蜘蛛の巣のようにヒビが入ったガラスというのは、それまで見たことがなかったのです。
子どものころは比較的やんちゃなほうでしたから、遊んでいて近所の家の窓ガラスを割ってしまったことも、一度や二度ではありません。また、東京では滅多に見かけない空き家も、自分が子どものころ住んでいた田舎にはけっこうあったもので、そんな廃墟のような空き家の窓ガラスが割られているのも、幾度も目にしてきたのです。
そんな経験から言わせてもらうなら、ガラスというのは、まるで水面に張った氷が割れるように亀裂が入るものだと思っていました。それは透明なビールグラスがわれるように、そして割れた部分は鋭利な刃物のようになってしまうものなのだと、そう思っていたのです。

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ところがわたしが高速道路を走る自動車で体験した「ガラスが割れる」という現象は、それまで見たどんなガラスの割れ方とも違っていたのです。
確かにスピードはかなり出ていたと思います。制限速度以上だったのは間違いありません。でも充分安全なスピードのつもりでした。前を走っていたのは二台の大型トラックでした。何を積んでいたかは覚えていません。突然、一台のトラックの荷台で火花が散ったのが見えました。次の瞬間には目の前が真っ白になりました。フロントガラスに何かが直撃し、亀裂が入ったのです。フロントガラスは特殊な強化ガラスで出来ているため、割れても破片が飛び散ることなく、前面にヒビが入りました。まさに蜘蛛の巣のようにガラスがヒビだらけになって、前が見えなくなったのです。
一瞬の間を置いて、わたしはブレーキを踏みました。バックミラーは見えていましたから、後ろに車両がいるのは分かっていたのです。そのままハザードランプを点灯させ、ゆっくりと左へ自分の車を寄せました。今でも生きているのが不思議なほど危険な体験でした。